机上の空想 -on the armchair-

エロゲを中心に(広義の)ビジュアルノベルに関するレビューやエッセイを主な活動にしてるつもりのブログです。6月24日より旧ドメインから正式移行しました。

ビジュアルノベル語り

『少女と世界とお菓子の剣』の気になること。

Route of AYANO

私立さくらんぼ小学校


Route of NANA


私立さくらんぼ小学校


Route of ICHIGO 1

私立さくらんぼ小学校

and To be concluded in "Route of ICHIGO 2"...



というわけで残るところ最終章「Route of ICHIGO 2」を残すだけ(多分)となった『少女と世界とお菓子の剣』。

伏線とか整理するなら今やろ! ということで、個人的に気になってるところについて、引用しながら整理……というか羅列してるだけの感の記事。普通にプレイしてて気付いた部分だけを記憶から引っ張りだしてきただけなので抜けも多く。



性質上全編に関してネタバレ全開なのでご注意を。
また、作品に対する変な視点を持つように誘導しているおそれがあるので、そういう意味でもご注意ください。
なんというか、見方を狭める内容というかそんな感じなのは否めません。
あと「」の使い方が統一されてないですがご勘弁を。
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ビジュアルノベルの画面に映るモノ

(初出:2012年12月 紙媒体)



ビジュアルノベルの画面が何を表しているかというのは、実はそれほど自明なことではない。
実写映画の画面ならカメラの記録した映像(あるいはそれを加工したもの)であろうし、一人称小説の文章は語り手の主観、三人称小説であればいわゆる「神の視点」からの情景描写、アニメはいわば「神のカメラ」を通した映像を描いたものだと考えればよさそうである(いずれも「基本的には」という注がつきはするが)。

しかし、書割の背景の手前にキャラクターの立ち絵が並ぶ光景が主人公の視点から映される……という典型的なビジュアルノベルの画面は、神の視点のように自由に光景を描けるものではないし、主人公が意識していないだろうものの存在をプレイヤーが認識することが出来るという点で主観とはいいがたい。かといってカメラと考えるには逆に汎用の立ち絵や背景といった素材があまりに抽象的である。
「主人公視点の位置に固定された神視点の記述」くらいが適当だろうか……と有り体に表現してしまえば、いかにも中途半端で窮屈な印象であることは否めない。

そのような問題を意識してか否か、そういった中途半端な典型的画面構成から逸脱しようとしている試みは少なからず存在する。

その方針の一つは、主人公目線からの解放――つまり三人称的画面を構築することだ。
『ef』をはじめとしたminori作品のように記録としての「神のカメラ」を意識させて映画的表現を自称するもの、ライアーソフトの『赫炎のインガノック』など逆に画面の抽象性を高めることで三人称小説的表現を実現しているもの、はたまた典型的な画面構成を保ちつつ『アルテミスブルー』のように非没個性的な主人公を導入し画面に登場させることで人形劇や舞台劇のような様相を見せているものなど、このような作品にもさまざまな形が存在するが、いずれにしても共通するのは「主人公が画面上に存在する」ということである。
主人公が画面に存在することで、画面が主人公の目線でもなければ主観でもないと明示されるのだ。

そうなればもう一つの方針は、一人称的画面ということになるのであろう。
それは傍目には旧来のビジュアルノベルにおける主人公視点となんら変わりないものであるが、それよりも画面の意味がより明確になったものだ。
一人称としての意味を明確にしようとすれば、主観そのものを描写するか主人公視点のカメラを再現するか、二つの立場が考えられるが、前者を実現するのが(特にエンターテインメントと両立しようと思えば)困難なことである一方、後者の方向に関して言えば実はそのような例は珍しいものではない。魅力的なキャラクターを画面上に再現する――つまり「キャラクターたちのリアル」を構築しようとする美少女ゲームにおける試みは、画面がカメラという記録装置の役割を演じることを可能とするからだ。
立ち絵自体を動かす試みは『ウィッチズガーデン』のE-moteなどといった近年の例を挙げずとも従来から行なわれてきたことだし、画面に奥行きを与えることで書割ではなく立ち絵の住まう空間として背景を扱っている『恋色空模様』のすたじお緑茶のような例も数ある。
そういう意味で、一人称的画面というのは実質的にほとんどのビジュアルノベルで指向されており、その洗練は――たとえ制作者によって意識はされていない「結果的」のような形であるにしても――数多くの作品の手によって着実に進んでいるのだ。
また、「画面内のリアル」だけでなく「画面自身のリアル」を追求している例も多くはないものの存在し、『初恋サクラメント』などPurpleSoftwareの作品では、カメラが発話者の方を向く、背の低いキャラを向いたときに背の高いキャラが画面から見切れるなど、カメラの方向や視界の限界に注意することにより画面を「主人公視点」として正確なものにしようとする試みがなされている。さらに面白い例としては『trade▼off』(同人ゲーム)のように、カメラの方向をプレイヤーが操作することによってフラグ管理が行なわれる(たとえば着替えをしているヒロインの方を見てしまうと好感度が下がる、など)というものも存在する(どちらかといえばアドベンチャーゲームとしての性格が強調される例ではあるが)。



これらの試みが追求されていけば、「ビジュアルノベルの画面が何を表しているか」あるいは「ビジュアルノベルの画面が何を表していくことになるのか」というものはある程度明確になるだろう。三人称的画面であればかなり自由に、神のカメラでも抽象的な記号の集まりにもなることもある一方、一人称的画面であればそれは自ずと主人公視点のカメラそのものになっていくことになる。画面によって主観を表現することの困難さにより、結果的にではあるが、一人称を選択することが表現に制限をもたらす形だ。

そこでさらに考える必要があるのは、実際には――ここまではグラフィックという面でしか考えてこなかったが――画面上にはテキストが含まれるということである。
一人称であろうと三人称であろうと、テキストは本質的に「画面内のリアル」ではありえない(視界の中にテロップやメッセージウインドウが見えている人間は存在するだろうか?)。したがって、特に一人称的画面を採用したとき、テキストと「画面内のリアル」は食い違いを見せることとなる。テキストを含む限り、ビジュアルノベルの画面は「画面内のリアル」を達成しえないのだ。実際三人称的画面として紹介した『ef』も『アルテミスブルー』も、テキストには一人称を採用したことで、画面全体での人称は一貫していない。

そのことをどう捉えるかは、考え方次第である。
たとえば先に挙げた『赫炎のインガノック』のように、「画面内のリアル」とは逆行して画面の記号化を進めながら三人称テキストを導入すれば、この問題は回避される。
また、「画面内のリアル」を阻害するとしてテキストを排除するのも一つだ。ボイス再生時にメッセージウインドウを消す機能を持つ作品はよくあるし、『ウィッチズガーデン』の公式ブログではおすすめ設定としてメッセージウインドウを画面外に出す方法が紹介されている。このような作品は最終的に、恐らくはビジュアルノベルとは違う形のもの……簡単に連想されるものとしてはアニメに近いものとなっていくだろう。

あるいはいっそのこと、その食い違いをもって、そして「主人公視点の位置に固定された神のカメラ」という中途半端さをもって、それがビジュアルノベルらしさなのだと開き直ってもいいかもしれない。
たとえば、漫画に対して「このページ全体は一枚の絵として何を示しているのか」などと問うことは有意味でない。漫画の一ページは、コマ割りや吹き出し――画面の抽象的な分割の技術――という漫画独自の文法に従って読み進めることで初めて意味を成すものだからだ。ビジュアルノベルとしても『Quartett!』などLittleWitchの作品では実質的に漫画と同じ画面構成が実現しており、ほかの何を示すでもない「『Quartett!』という作品の画面」が成立している。
それらと同様に、どっちつかずなビジュアルノベルの画面の混然さをこそ文法として昇華して、そこに立脚した独自の――たとえば立ち絵と背景と一人称テキスト、そして音という構成でしかできないような――演出を目指すことを肯定するような立場があってもいい。たとえば『WHITE ALBUM 2』をはじめとした丸戸史明の作品では、典型的なビジュアルノベルの画面構成を保ちつつ、テキストにない情報を積極的にほかの表現に託しその逆も行なうといった演出がなされており、その傾向を強く感じることができるだろう。



いずれにしても、ビジュアルノベルの画面は依然として洗練の余地のある要素だ。そういう意味では、ビジュアルノベルは未だ始まっていないとすら言えるかもしれない。ならば、それらの洗練の先に――ビジュアルノベルが始まりを迎えた未来には、想像もつかない表現があるのではないかという希望もあるはずだ。そう、ビジュアルノベルはまだまだ、終わったジャンルなどではない。






『甘えむっ♪』レビュー(?)のとこでも少し触れているのですが、冬コミで頒布する冊子に載せてもらうつもりで書いた原稿の不掲載を決めたので、その後〆切ギリギリ(アウト)のところを割と突貫で書いたのがこの文章です。結びのやっつけ感。そしていま掲載するには旬を過ぎた感。

そんなわけで新しく何か考える暇もなく、画面演出について考えたことを、切り口を変えて整理という感じに。
特に(ユリイスの論として)新しいことが言えない分、とりあえず「ちゃんと適切な例を挙げながら述べてみよう」という心づもりで書いてみましたが、果たしてそれが出来ているかは……。



あと、完全にチラ裏ですが。
本当は丸戸の名前は挙げたくなかったんだけど、どうしてもあの部分にふさわしい作家が彼しか思い浮かばなかった。苦渋の決断。
いや、「エロゲならでは」を考えていくとこの上なく素晴らしいライターのはずですし、事実そういう評価を受けてる人なんですが。なんつーか、なんつーかなあ。彼ではダメなんだ、少なくとも、自分にとっては。

物語とのインタラクション ~『甘えむっ♪~おかあさんのかぞくけいかく~』に見出す物語の可能性~



夏冬に載せてもらってる本に寄稿しようかと思って草稿を持ってって読み合わせをしたところサッパリわからんと言われてしまったので、そちらには寄稿せず端からこっちに投稿してみようと思います。

読み返してもあまり整理されてるようには思えない&駆け足にすぎる感のたくさんな文章ですが、HAINゲー好きたちへの刺激に少しでもなったらいいかなあ、と。




読む上での注意は……半角かっこ()はフリガナを表してます。まああまり気にせずに。

あ、もちろんのこと『甘えむっ♪』に関する重大なネタバレを含むのでこれからプレイする予定のある方はご注意を。読むなとはいいませんが。



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E-mote雑感 ~動く立ち絵演出について~

ビジュアルノベルであるということ」で名指しまでしてしまっているので、まあ一度は感想を述べておかないと嘘だよなあ……ということで、ういんどみる新作『ウィッチズガーデン』の体験版をやってみての感想を。

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まあ大よそはプレイした当時Twitterで述べた以下のポストに集約されているのですが……









もうちょっと詳しく述べてみたいと思います。
(動き方がどうこう、という動きの良し悪しについては語りません)
(後日「立ち絵「しか」動かない」の段を少し書き替えました)
(さらに追記をひっつけました)
(さらにE-mote以外の技術についての補足をひっつけました)
(んでもってE-moteの説明HPが公開されてたので追記しました)
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2012年前後に商業化した同人ノベルサークル雑まとめ

去年もMGS(最近使ってない)で似たような記事を書いたのですが、近頃同人から商業に活動の場を移されるクリエイター・サークルさんを多く見受けられる気がします(自分の知識がついただけという気もしないでもないですが……)。

特に夏コミ以降、よく知るサークルさんの商業化の知らせが続けて入ってきたもので、これはなんかもうまとめとかないといけないんじゃないかというよく分からない義務感に駆られました。

――ということで、2011年以降に商業化した静的(というかノベル系)同ソサークルさん方を把握してる限りで整理してみました。雑ですが。
「商業化した」という判断は、スタッフ(絵師、ライター、スクリプト、音楽……)が複数人引き継がれてるかどうかを基準に。絵師さんだけ・ライターさんだけが商業デビューというパターンは今回除外(してると思う)。タイトルやブランド名を引き継いでる場合は判断するまでもないですが。

(追記)
ここでいう商業、というのは商業流通のことを指します。個人か企業か、という問題ではないので注。
→参照:商業同人についての覚書



(14/3/13更新)

◇2011年発売

■トラウムブルグ七番地 (『Bye』など)
トラウムブルグ七番地
→SORAHANE (『AQUA』)
AQUA -SORAHANE ソラハネ- 『AQUA-アクア-』はじめました。「命」と「絆」の近未来学園ヒューマンビジュアルノベル


CottonClub (『くれうた』)
→Iris (『闇色のスノードロップス』)
『闇色のスノードロップス』応援中!


■ルナSystem (『七ヶ音学園』など)
七ヶ音学園
→NanaWind (『ユユカナ』)
『ユユカナ』応援中!


■RIFF*RAFF (『オモイデあ~かいぶ』など)
→riffraff (『恋愛家庭教師ルルミ』商業化)
『恋愛家庭教師ルルミ★Coordinate!』応援中!


■スマイル戦機 (『誰が殺したコマドリを』)
→同名(同タイトル商業化)
スマイル戦機


■SherbetSoft(『リザイン』など)
→同名(『制服天使』)
『制服天使』応援バナー



◇2012年発売

■半端マニアソフト (『Indigo』など)
半端マニアソフト『Indigo』
→すみっこ (『はるまで、くるる。』)
すみっこソフト『はるまで、くるる。』応援中!
※まあ実質ということで


■VALLEL (『古本屋こほにゃ』など)
古本屋こほにゃ
→Reon (『FaintTone』)
FaintTone|Reon


LLERIA (『Summer×3』)
→シュガーハウス (『チューニングラバー』)
チューニングラバー中二病ドタバタラブコメディ


■ふぐり屋 (『その花びらにくちづけを』シリーズ)
ふぐり屋
→ゆりんゆりん (同シリーズ商業化)
ゆりんゆりん 『その花びらにくちづけを ミカエルの乙女たち』 11月30日発売!



◇2013年発売

■ふぉらん (『オルフェウスの銀琴』など)
ふぉらん
→SMILE (『ラブレッシブ』)
ラヴレッシブ


■宴 (『クリアレイン』など)

→ヨナキウグイス (『運命予報をお知らせします』)
ヨナキウグイス
※曰く「宴とは別物になります。(商業へ移行したわけではない)」とのこと。


■non color (『わーすと☆コンタクト』など)
non color
→HARUKAZE (『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』)
『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』 一之瀬ルキナ


■れいんどっぐ (『僕はキミだけを見つめる』など)
れいんどっぐ
→インレ (『ChuSinGura46+1』商業化)
インレ『ChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1-』


■ガイコツけんぽ (『rubellite』など)
ガイコツけんぽ
→Garden (『ラブレプリカ』)
『ラブレプリカ』応援中!


なんか忘れてるような気がする程度には多い……。
「これ入れるべきじゃね?」な情報や、「これ間違ってね?」的な指摘など、何かあれば教えていただけると幸いです。
プレイ本数が同人>>商業なこじらせ系引退気味エロゲーマー。同人ゲーム「MYTH」のファンサークル「MYTH研」の代表として同人誌作ったりもしました。
MYTH10周年記念本通販
MYTH10周年記念同人誌
「MYTHology」を通販にて頒布中!
mythology
ご案内と注意
エロゲ感想の多くは雑感という形で雑記(+簡易感想)に紛れてます。

プレイ済リストや、下の検索欄からご参照ください。

批評空間のarmchairと同じ人です。

好んでいる作品の傾向を見ていただくだけなら、そちらの得点表を見ていただくのが速いかもしれません。

また、同人ゲームの感想をお探しの方は、批評空間でも同じような感想を述べてることがありますので特にご留意ください。


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