机上の空想 -on the armchair-

エロゲを中心に(広義の)ビジュアルノベルに関するレビューやエッセイを主な活動にしてるつもりのブログです。6月24日より旧ドメインから正式移行しました。

2008年05月

赫炎のインガノック

今日の紹介は、ライアーソフトの「赫炎のインガノック」です。


10年前の《復活》によって、蒸気機関都市インガノックの全てが歪んだ。精霊や妖精のような幻想生物が姿を現し、また人々を動物の姿へと変異させる奇病が流行り、何より41体の異形『クリッター』が人々を脅かす。そして都市を覆うように立ち込める無限霧によって、インガノックは完全に孤立していた。
御伽噺が現実であるこの都市には、もう御伽噺は存在しない。ただ一つだけ、『奇械』という鋼の英雄が、儚い願望のように時折語られるだけである。
・・・・・・
死と貧困の渦巻く都市下層。ギーは、《復活》によってもたらされた力『現象数式』をもって、貧しい人々への巡回医療を営んでいた。『死の都市法』に逆らって、死に行く人々に手を差し伸べ続けるも、目の前で消えていく、命。それでも彼は、手を差し伸べるために、街を歩き続けた。
そして彼は出会う。「キーア」と名乗る少女に。「鋼」の彼に。

独特の世界観、言葉遊びのようなテキスト、そして難解なシナリオ。激しく人を選びそうな作品ですね。自分はとても気に入った人間です。
魅力を感じた点は多々あります。
まず、世界観を初めとした「雰囲気」の構築。難解ながら緻密に練られた設定と、それをありのまま体現したようなグラフィックや音楽達がインガノックの世界へのめりこませます。特に音楽は、数が少ないながらも秀逸なものばかりだと思います。また、言葉遊びのようなテキストが、この世界観を彩る重要な要素になっています。特に(賛否両論であろう)戦闘や黄金螺旋階段などのバンクはプレイヤーの皆さんに強烈な印象を残しているでしょう。
そして、その独特のテンポのテキストで綴られる物語。所々で見かける評価に「大人の御伽噺」というのがありましたが、正にそれ。色々な隠喩と言葉回しで難解に見えるけれど、根幹は単純で、それでいて大切なもの。号泣するような感動劇があるわけではありませんが、自然と頬を涙が伝うような、心に染込んでくる美しい話であったと自分は感じました。
物語に付随して、その中で描かれる人々も魅力のひとつです。「心の声」というシステムによって、登場人物が深く掘り下げられ、彼らへの愛着は一層強く。また、そうして「声」を聴けるメインキャラはもちろんのこと、色も声もない人々の生き様さえ、汚くも美しく、ひたむきで。声といえば、CVも完璧だと思います。ただ、フルボイスでないのが惜しまれるところ。

個人的にですが、この作品はアダルトゲームとしての理想形に近いんじゃないかと思います。アダルトという点では、暗さと憂いに満ちた難解な作風、効果的に挿入され雰囲気を損なわないHシーン。ゲームという点では、美しいグラフィック・音楽・テキスト、ADVという形式をいかした「心の声」システム。それらが組み合わさって本当の「アダルトゲーム」たり得てる、と。

そこに良質のシナリオが加わってもう最高……と言いたいところですが、そこまではまだ一歩足りませんか。何が足りないといわれればそれは……パートボイスに代表される製品としての質のようなものでしょうか。粗を探そうと思えば幾らでも見つかってしまう作品なんです。
ですから減点方式なら低得点になってしまうでしょう。しかし、加点方式ならどこまでも点が伸びる良い点をたくさんもった作品だと、自分は思います。



現在、WEBノベルが連載中。内容は主に外伝とアフターストーリーです。
自分、実をいうと作品のラストに納得できない部分があったのですが……アフターストーリーを読んだら色々吹っ飛びました。まだ続くようなので期待。
アティに入れ込んだ身としては2・3回目が破壊力抜群です。叫んで死にそうです。
一つの作品なら製品中で完結しとけよというツッコミはなしの方向で(汗)。


では、以上で失礼します。

ひまわり

今日は、ぶらんくのーと「ひまわり」を紹介します!


あらすじは体験版の紹介をご参照下さい。

体験版の紹介で、「なかなかヘビーな設定がある」と書きましたが、全部クリアしまして思うのは……。

ヘビー過ぎるわ(爆)。

1周目で十分に伏線が張り巡らされていて、結構深い話が期待できるとは思っていたのですが、いざ2周目に突入すると予想の更に上を行く展開。凄い。スケールがでかい。
この作品は、前にも書いたとおりの「宇宙」という遠大なモチーフに、そしてそこに「生命」というこれまた底なしの深さの題材を用いた物語。その中で描かれるのは「愛」「夢」「友」「死」「記憶」などといった普遍的ながら永遠の人類のテーマ。
これらが、メイン・サブを問わない様々なキャラクター同士の間で入り組む関係と、その人々の人間ドラマの中で描かれます。1周目ではボーイミーツガールの爽やか物語の後ろに見え隠れする一筋縄じゃいかなそうな事実関係、2周目は「人」というものに振り回される人々の葛藤、それ以降では動き続ける歯車に喘ぎつつも生きていく人間の姿。それらをアクアを始めとする魅力に溢れたキャラクター達が彩るこの物語に、自分は時間を忘れるほど引き込まれました。
モチーフからテーマ・中身に至るまで広げまくった風呂敷に、振り回されることなく描ききったシナリオの腕は、賞賛に値すると思います。同人というのも侮れませんね、全く。


あえて一般的な表現で小さくまとめて見ましたが、いかがでしょうか(汗)。同人作品で値段も1500円未満とかなりのお手軽なので、是非プレイしてもらいたいと思います。

では、最後にこれからプレイするという人(いればですが)へ……。

できれば全エンドをコンプして欲しいと思います。エピローグの衝撃を味わうためと、そして最後のTIPSを見るために。
ここでTIPSというシステム。要するにショートストーリーで、バッドエンドを回収していくと増えていくのですが、最後の一つはバッド以外の全エンドをコンプリートしなければ見れません。この内容がまた。なるほど、TIPS。


では、以上で。

無謀な雑記

長期休みごとに元気になるとか言いながらほとんど更新できなかった、台鼎です……。

色々あったんですがね。
keyのアレは本気だったのかとか。
逆にぶらんくのーとアレはネタだったのかとか。
TYPE-MOONの新作に何故めてお氏がとか。
時代に逆行しているとしか思えない新作を作ろうとしているDigitalCuteなるブランドに惚れたとか。
もう活動停止しているとばかり思っていた半端マニアソフトRecordのサイトが一新されていたとか。
最近になってWHITE-LIPSにハマり出してlightBOXを衝動買いしそうになったとか。
鋼炎のソレイユを買おうかと思ったら9000円弱だったのでなんとなく買いそびれてしまったとか。
友人の代理で行ったef(minori)の体験版配布会&トークショーが結構面白かったとか。
赫炎のインガノック・WEBノベルが自分を泣かせる為に作っているとしか思えないとか。
風音様がToHeart2ADとリトバス18禁版に出ていることにファンの癖に今更気付いてなんだか欲しくなってきたとか。

ひとつひとつ書いてくと長くなるんで止めときます(汗)。

そういうのを日々書いていけばいいのかもしれませんが。自分の生活をダラダラ書いて欲しいなんて人はあまりいるとは思えないので、最高でレビュー:雑記=1:1程度に収めたいと思っているわけなんです。かといってレビューを量産できる力があるわけでもなく……。
そんな自分を奮い立たせる為、4日間連続更新を目指してみます!もちろんレビューで!連休中毎日書いて、各々の翌日アップしようという魂胆です。
できるかは分かりませんが生暖かい目で(笑)見守っていただけると幸いです。……更新滞りすぎて見ている方がいらっしゃるかどうか分かりませんが。


では、失礼します。

EDEN-最終戦争少女伝説- 体験版

今日紹介します体験版は、同人サークル・LAST WHITEの「EDEN-最終戦争少女伝説-」です。


ぐうたらな学園生、市之倉隆が、担任教師に無理矢理連れて来られた御六島・9日間の旅。学園きっての美少女・栗栖花濡が一緒ということで同行の学園生達は色めきたってるが、生憎彼にはあまり興味がない。突然発見された未開の島なんてものに関心があるわけもなく、貴重な夏休みを教師監視の下で過ごさなくてはいけないことに嫌気が差すばかりだ。
しかし、島に到着してからはそれどころではなくなった。米軍司令官の「死んでもらう」に始まり、仮面の女、数百のロケットヘッド……。そして今、レイプされかけている花濡。屈強な軍人に取り押さえられた彼女を助けようとした勇者はあっさり蜂の巣にされ、助けに行ってもその二の舞……だけどこのままでは彼女が慰みものになってしまう。そこで隆は時間稼ぎに、ある嘘を叫んだ。
しばらくして、その嘘が原因でみんな死ぬことになった。まだ死んだわけではないが、彼らの頭上に落ちてきているアレは世界最大級の――。
絶望的な状況。死を覚悟した彼の胸に去来したのは、ある少女との「心臓と手のひらの契約」の記憶だった。

ゲームが起動してまず思ったこと。
ウホッ、いい声……(;・∀・)
何なのかはやってみてのお楽しみで(笑)。そしてそのインパクトも冷めやらぬまま本編を始めると、更にまた……。どんだけ強烈なんだコイツは。衝撃を受けたシーンを挙げればキリがない。
しかし、展開のインパクトだけで力押していく作品かと思いきや、テキストが中々秀逸。一人称で臨場感溢れる文体に、スクリプトの工夫で話にグイグイ引き込んでくれます。描写も所々に感心するところがあって良。そして、構成が結構巧妙。衝撃的な現在を中心に回想を織り交ぜることで展開に緩急がつき。加え序~中盤に衝撃的な展開をてんこ盛りにすることで、後半語られる主人公の過去を、普通ならやりすぎに感じそうな所をすんなり受け入れさせてくれます。構成に関していえば続編で同じようにできるとは思いませんが、序章として読者を獲得するという点では大成功しているかと。
また絵は、かなり濃い画風なものの高水準といえると思います。塗りと瞳の描き方が独特なので受け入れにくい方もいるかと思いますが。普通でないところも話に引き込む要因になっているかもしれません。
ちょっとシナリオに言及してみると、主人公がヘタレにもヘタレですが、十分に成長の余地がありそうなのが自分には好印象。また「ホルス」「鷹」「象」という用語からモチーフはエジプト神話?かと。これまた渋いところを突いてきますね。このセンスも気に入りました。
そして驚くべきはこの作品、文・絵・音・システム(吉里吉里のスクリプトですが)に至るまで一人でやってらっしゃること。それぞれが独特の作風で完成しつつあるのが凄い。
出オチになる不安もあるにはありますが、展開・設定だけでなく他の面が高水準なのが期待できますね。

この作品、某批評空間でちょっとした話題になったりしました。それだけに知名度も人気も結構あるようで、某SNSのコミュニティは設立二週間しない内に50人を超えました(汗)。同時に建てた他3つは滅びに向かうだけなのに……。




では、以上で。
プレイ本数が同人>>商業なこじらせ系引退気味エロゲーマー。同人ゲーム「MYTH」のファンサークル「MYTH研」の代表として同人誌作ったりもしました。
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ご案内と注意
エロゲ感想の多くは雑感という形で雑記(+簡易感想)に紛れてます。

プレイ済リストや、下の検索欄からご参照ください。

批評空間のarmchairと同じ人です。

好んでいる作品の傾向を見ていただくだけなら、そちらの得点表を見ていただくのが速いかもしれません。

また、同人ゲームの感想をお探しの方は、批評空間でも同じような感想を述べてることがありますので特にご留意ください。


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