前回同人だったので、続けて今日も同人。
今回体験版を紹介するのは、彩頃望磨の「契剣」です。

雨の中、麻帆は彷徨っていた。
帰るべき場所は、もうない。金もない。頬を雫が伝う。涙ではない。思えば、先刻父の死を目の当たりにした時でさえ、彼女は泣かなかった。
浮浪者の溜まり場へと辿り着いた麻帆は、雨宿りしようと汚れたブルーシートをくぐった。
そこにあったのは血の海。立っていたのは、二人の相手を軽々と蹂躙する殺人鬼だった。
・・・・・・
今日の相手は、人を食らう人・食人鬼(カニバル)。真異は、殺人鬼のみを殺す、「異端」と呼ばれる殺人鬼である。だから、食人鬼の棲み処に一般人である少女の姿を認めても、特に相手にするつもりはなかった。
だが、隠れ処に帰る彼の少し後を少女は何も言わず尾行して来る。廃墟の三階にある隠れ処に着き真異は放置を決め込むが、ずぶ濡れの少女は階段の下でうずくまり帰る気配は無い。結局折れて中に入れるのだった。
そして少女は、真異に願いを吹きかける。「殺して欲しい人がいるの」と。

プロローグ部分にはこの後、もっと重要なシーンがあるんですが、敢えて描写しませんでした(ほんのちょっとですがね)。実際にプレイして体験してもらいたいと思います。
まず読み方からですね。サークル名は彩頃望磨と書いて「サイコロボード」、作品は「ちぎるけん」と読みます。変換に不親切な名前です。
なんといってもこの作品はグラフィックが美しいです。闇に、雨に、血にくすんだ世界。そのなかにあって艶やかに光る白。それは少女の肌や月光。息を呑むその対比が実に美麗。引用・誇張になってしまいますが、あのシーンで自分も彼女のマキヤベリに捕らえられた、そう言いたい位の気分でした。一枚絵はいうべくもなく、普通の立ち絵や背景もハイクオリティ。惜しむらくは解像度が一般のゲームより低い640*480なことですかね。ホントなら1028*768でいて欲しいくらいなんです。
シナリオ・テキストも独特のセンスがあるような感じがします。特にコレがスゴイ、と際立つものはない印象ですが、ノベルゲームにおいて「殺人鬼」という題材を魔法・呪術的要素を抜きで(確かに非現実的な部分は多々ありはすれど)描写しようという意気、そしてそれをなかなか達成できているところを評価したいですね。
また、キャラが良く出来ていてます。特に麻帆。パッと見て年齢と性格が合ってないような気がしますが、偶に見せる年相応の幼い面があり。えぇ、ギャップに萌えます。そんな麻帆と真異とのちぐはぐな会話が面白かったり。
そして、これがなかなか、音楽。お世辞にも(音源的に)高品質とはいえないBGM。音楽重視の自分はMIDIということに一瞬首を捻りましたが、ところがどっこい、かなり癖になる。世界観に浸るのに一役買っています。狙ってやってたら大したものです。

WEB体験版は結構前に出てたんですが、ちょうどあまり書けない時期だったので今更ということに。とりあえず応援だけでも、とプレイ直後に拍手を送りました(一応8月29日のWEB拍手の中に・・・・・・)。
冬コミには出展しないようで、MYTHと同じく発売が待ち遠しい同人作品ですね。

では、以上で紹介を終了します。