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※前注
某誌で行なった「俺のよめがこんなに可愛いわけがない」なる、いかにキモくヒロインへの愛を披露できるかを競う悪ふざけ企画の原稿です。
読み返すと『クロス』『オレの氷川雫』が好きな理由が大体まとまってる感じだったので、レビューとして掲載してみます。

(初出:2010年12月 紙媒体)




 氷川雫、という少女がいる。恐らく美少女ゲームでも比較的マイナーな作品に分類されるであろう『クロス~狂気への道標~』という陵辱ゲーのヒロインである彼女だが、この手のゲームとしては異例のスピンオフ作品が発売されたほど、プレイヤーたちを魅了した存在らしい。かくいう私も、その中の一人なのであるが。

 彼女の魅力を一言で伝えるなら、「孤高」である。陵辱ゲー、つまりヒロインを落とすことを目的としたゲームにあって、彼女は主人公の陵辱に決して屈することがなかった。
「キミは、必ず、私自身の手で、直接、殺しますから」。
 理不尽に繰り返される蹂躙の果てに未だそう言ってのける彼女を、快楽を甘んじて受け入れながら決して「雫」の尊厳を失わない彼女を目の当たりにして、私は真に彼女を愛することとなったのである。彼女のその孤高は、スピンオフ『オレの氷川雫』内のエピソード『オレの奴隷 氷川雫』でも、くすむことなく燦然と輝いていた。

 しかしながら彼女は恋というものを知ってしまうと、どうにも弱くなってしまうらしい。『クロス』のハッピーエンドや『オレの恋人 氷川雫』では、芯の強さは彼女そのものではあるのだが、彼女は主人公の良きパートナーに落ち着いてしまうのである。美少女ゲームのヒロインとしては、それは極めて正常なことなのだろう。しかしそこには、かつて私が愛した雫は見る影もない。ただ一人の女性として主人公に好意を向けるキャラクターがいるだけ。そう、雫は、彼女一人でなくては雫としての尊厳を保ち得ない。彼女の意志の中に、彼女以外の存在を前提してはならないのである。

 孤高の花、氷川雫。番を作れば消えてしまう強くも儚い偶像。私の愛する雫に番う存在は、彼女自身の定義が許さない。それでも私は、このような下劣な言葉にすることでしか彼女への追慕を表現しえないのだ。
 ……「オレの嫁、氷川雫」と。